チンプンカンプン 入団直後に、『Down the Tile !!』と言われ・・・

 私がバーバーショップコーラスに初めて出会ったのは、2000年に1990年の世界チャンピオンカルテット「Acoustix」が日本に来て岡山、大阪、所沢、東京、でワンマンショウを開いたときです。

 ショウ当日の所沢文化センター大ホールは2000席が満席!!客席で彼らの生み出すハーモニーを聴いて、それまでの合唱人生がひっくり返るような衝撃的な感動に包まれたのを記憶しています。

 私は学生時代に男声合唱を、40代半ばからは地元の所沢で男声合唱団「所沢メンネルコール」(TMC)で歌っていて、早速TMCの同年代のメンバーに声をかけカルテットを組みました。「Campanula」というなんとも似合わない名前を付け、とにかくバーバーショップコーラスの愛唱曲集「Barberpole Cat Song Book」12曲を制覇しようと練習しました。

 幸いTMCには東京バーバーズと掛け持ちの団員4人がいて、「Dandelions」というカルテットを組み活動していたので、彼らに教わりながら歌い続けていました。

 7年くらい経った2008年、「Dandelions」テナーの上野さん(故人)に紹介して頂いて東京バーバーズに入団しました。カルテットから始めたバーバーショップでしたが、大人数のコーラスもやってみたくなったのです。当時の東京バーバーズは団員数50人位だったと思います。

 入団してすぐ、合宿がありました。アメリカからのコーチGary Steinkampさんの指導が始まりましたが、とにかく私にとってバーバーショップの指導らしい指導はこれが初めて。そのうちに「Down the Tile !!」と号令が掛り、周りの団員たちは一斉に体も顔も前を向き直立不動の姿勢を保ちます。

 いったい何が起きたのか訳が分からず、とにかく前の団員の真似をしていました。「Down the Tile」のTileは床のタイルではなく天井板のことで、「天井板に合わせろ」=「正面(客席)に向きを変えろ」という号令だったのです。同じバーバーショップコーラスでもカルテットには無い動きですね。

 また日本の合唱界に同じような用語は無いですよね。ちなみに、演奏中、指揮者に集中している態勢を「Chorus Position」といいます。

 他にも独特の(日本が独特かな)用語や作法がありますが、「Down the Tile !!」これが一番印象に残っています。

                                   Norakuro

ゲイリィ・スタインカンプ(Gary Steinkamp)さんのこと ②

1999年にゲイリィのコーチを受け始めてから1年後の2000年、東京バーバーズはBHSバーバーショップハーモニーソサイエティの国際大会、ワールド・ハーモニー・ジャンボリー(WHJ)というイベントに招待されて、初の海外演奏をしました。

WHJへの招待状が東京バーバーズに最初に届いたのは、実はその1年前の1999年国際大会へのものでした。1998年ハワイの環太平洋大会のコーラス・コンテストの客席にWHJの主催者夫妻が来ており、出場した東京バーバーズを聴いて、一目惚れしてくれての招待でしたが、ハワイ大会で審査員のハンク・ハマーに「バーバーショップらしい響きがしない」と指摘されて、当時世界レベルのコーチを受けたことのない私たちには、まだ荷が重かったのです。

そこでゲイリィの特訓を受けて1年、改めて2000年カンザスシティの国際大会への招待を受け、何とか態勢を整えて15人でWHJに参加しました。この大会、指揮をお願いしたゲイリィは「日本からのバーバーショップ・コーラスの、国際大会への初舞台は、日本人だげでやるべきだ。」と言って、指揮を固辞して、ステージの袖で演奏を見守ってくれました。

また、国際大会の行事の一つDecrepits’ Breakfast(老いぼれ犬達の朝食会: BHSの元役員たち長老の集まり)のアトラクションに呼んでくれたり、お父さんのロイド (Lloyd Steinkamp) さんを紹介してくれたり、色々国際大会の楽しみ方も伝授してくれました。そんなこんなで、このカンザスシティ国際大会がまた、ゲイリィに私たちが惚れ直す機会となりました。

因みに、ロイドさんは、東京バーバーズの愛唱曲の一つOver The Rainbowの編曲者で、大会会場となったホテルのロビーでロイドさんを囲んで、この歌を歌ったのも良い思い出です。

この国際大会、WHJではOver The Rainbow、遥かな友に、Bad Buncha Boys(悪ガキどもの歌)の三曲を歌い、Decrepits’ Breakfastでは、Hello Mary Lou等を歌っています。一曲目のOver The Rainbowの歌いだしはテナーのソロなので、参加15人中の唯一人のテナーだった上野さん(故人)は、ものすごく緊張したそうです。(Kaz 松村)

Standing Room Only – From the First Hello to the Last Goodbye 右端がGary Steinkamp氏。