コンテストの採点基準など

Contest Systems

米国のバーバーショップ・ハーモニー協会のカルテット及びコーラスのコンテストの基本的なアウトラインを纏めました。

 

Contest Songs コンテスト曲の選曲

SPEBSQSAのコンテストでは、Barbershop Styleの保存の上で、一番優れたグループを選ぶのが目的ですから、歌う曲は当然、コンテスト・ルールでスタイルに適した曲であることが求められます。如何に良いハーモニーを奏でても、スタイルにそぐわなければ零点です。

ですから、歌う曲は、Tin Pan Alley Songs(ティンパン街の歌)を中心とした、アメリカの昔のポピュラー・ソングをバーバーショップ・スタイルに編曲したものが中心でした。

但し、1993年以降は採点基準が緩和され、1800年代末から1930年代までに作曲された曲(要するに上記ティンパン街の歌)だけでなく、バーバーショップ・スタイルに編曲可能な曲なら、コンテストで使えることになりました。

これは、ティンパン街の歌だけでは、スタイルの保存もままならない、もっと一般的に受け入れられる曲も許容しなければ、バーバーショップが生き残れないとの認識が深まった為のようです。その結果、1990年代後半のコンテストでは、ミュージカルやジャズ、ブルースの曲を題材とした新しい曲がコンテストでも歌われるようになってきました。

但し、趣味の世界に政治と宗教を持ち込まない、という協会の倫理規定から、愛国的な歌や宗教曲はコンテストでは使えません。

コンテストでは、一回のステージで2曲づつ歌います。コーラスの場合は、大体一回勝負ですが、カルテットは、予選・本選が数回に亘るので、多くの持ち歌を揃える必要があります。一つのコンテストで、同じ歌を繰り返し歌うことは許されません。

 

Judging System コンテストの審査

協会のコンテストでは、採点は、Singing, Presentation, Musicの3カテゴリーで採点され、その合計点で優劣が争われています。予選、本選と複数回のステージがある場合は、全てのステージの累積ポイントで順位がつけられます。

3つのカテゴリーは、夫々厳格な採点基準があり、カテゴリー毎のスコアシートに基づき、協会が認定した審査員が、採点を行います。

    1. Singing  バーバーショップの魅力は、なんと言っても、その豊かなハーモニー。
      その為には発声、パート・バランスやパート間の一体性、調性(ピッチ)の維持と共に、一音も揺るがずに、全ての和音がハマる(lock)ことと、倍音が響き渡る(ring)ことが重要視されます。
    2. Presentation  演奏者が、歌に命を吹き込み、それが観客に伝えられるかに焦点を当てます。単語の抑揚、音色、表情やボディ・ランゲージによる表現力、ムード、テンポ等々、口先だけでなく、心の底から歌っていることが伝わらなければ、単なる発声練習であり、エンターテインメントとしての価値は低い。…ということで、振付けを含めた表現力が一つのカテゴリーとして審査対象になります。
    3. Music   演奏の質の観点から、メロディー、ハーモニー、歌詞、リズム/拍子といった共通の音楽要素を芸術性の観点から評価します。また、バーバーショップらしい編曲の要素が盛り込まれ、それをどのように歌いこんだかも、ここで評価されます。 この為、「一般的な音楽性」と「バーバーショップ・スタイルの維持保存」という両面性を一つのカテゴリーの中で評価するという難しさがあると言われています。

Common Ground

上記3カテゴリーの中には、共通要素として「バーバーショップらしさの保存」の観点から、カテゴリー内に留まらず、広い視野から評価する余地が与えられています。

 

Certified Judges コンテスト審査員

SPEBSQSAの大会のコンテストの審査員は、全て協会の指示で協会の認定審査員の中から選ばれます。協会の審査員システムは、以下のように非常にアカウンタブルなシステムになっています。

審査員は、協会各支部からの有資格者推薦に始まり、資格審査、コンテスト・ルールに関する試験、テープを使った模擬審査、審査後の講評の口頭試問、コンテストでの審査実習を経て、各カテゴリー毎に、協会によって審査員として認定されます。

認定後は、年2回のコンテスト審査参加が義務付けられて、コンテストに駆り出されます。コンテストでの審査結果は、協会本部でのレビューを受け、また個別コンテスト出場者への採点内容の説明を行う審査講評セッ ションで、キチッと説明する義務が課せられています。

また、採点基準のレベリングの為、各地コンテストでの問題点の見直しがコンテスト審査委員会で行われ、審査員はそのフィードバックのために開催される、審査員合宿に参加しなければなりません。

それでも、最近の選曲範囲の拡大、編曲の進歩などへの対応は難しく、2000年には21世紀に向けてのバーバーショップ・スタイルの方向性の見直し再確認を行うStyle Examination Committee(スタイル検討委員会) で、審査システム/審査員教育の見直し提言が行われ、協会のコンテスト審査委員会も、これに対応して見直しを進めています。

 

e-東京バーバーズより

2021年5月3日